中小企業の経営計画策定と業績への貢献

2020年版小規模企業白書の「第3部・第2章中小企業・小規模事業者における経営課題への取組(企業規模別)」の中で、最も重要な経営計画等に関する要点を、次のとおりまとめました。

  1. 経営計画策定の有無。

  2. 経営計画策定の内容に関する自己評価。

  3. 経営計画策定が業績に与える影響度。

  4. 経営計画策定に関して、外部の中小企業支援機関へ要請を行っているのか。

以下、経営計画等に関する要点を見ていくことにします。

1.経営計画策定の有無(企業規模別)

経営計画とは、企業のあるべき姿と現在の企業の姿のギャップを埋めるため、戦略目標や会計数値の目標を明示し、それを実現するための行動計画です。

 

第3-2-8図は、経営計画への取り組みの状況を、企業規模別(小規模事業者「従業員20人以下」・中規模企業「従業員21人以上」)に分けて表したものです。

 

中規模企業の経営計画等の取り組みは「69.6%」で、小規模事業者は「47.5%」となっています。中規模企業は成長に向けた経営計画の重要性の認識と、経営計画への取り組み企業が多いことが窺えます。一方、経営計画等を策定している小規模事業者の経営陣の皆様からは、会社成長への「志」の高さを強く感じます。

注記1)中小企業における経営計画又は事業計画(以下、「経営計画等」という。)

注記2)出所:「2020年版小規模企業白書」

2.経営計画策定の内容に関する自己評価

経営計画策定の3要素は、
①売上高や利益などの数値目標の妥当性
②数値目標の根拠
③具体的な行動計画への取組 です。

この3要素が経営計画の良否を決めることになり、3要素があるからこそ、経営計画の内容に関する客観的な自己評価をすることができます。

 

第3-2-10図は前出の経営計画に対する分析を行ったものです。自己評価の結果は、4割以上が「十分」「おおむね十分」と回答しており、中規模企業の方がそれらの割合か高くなっています。

注記)出所:「2020年版小規模企業白書」

上記の図表で重要なことは、一歩進めて自己評価の『回答率』をどう活かすかにあります。つまり、経営計画の「自己評価」と「業績」への影響度を検証することです。

3.経営計画策定の業績への貢献

経営計画は「絵に描いた餅」になっては意味をなさず、経営計画の策定→運用→「成果」へと繋げていくことが本来の経営計画の付加価値を高めることになります。

 

第 3-2-11図は、経営計画の内容について、小規模事業者・中規模企業の内、「計画内容が十分と評価している者」と「計画内容が十分と評価していない者」に分けて、①売上高、②経常利益、③従業員数への業績の影響度を表したものです。

それぞれの指標において、十分と評価している者の方が、「大幅増加」または「増加」と回答する割合が高くなっています。経営計画策定における客観的な自己評価がいかに重要かを物語っています。

※第 3-2-11図の十分は、第3-2-8図の「十分」「おおむね十分」を含んでいます。

注記)出所:「2020年版小規模企業白書」

上図から言えることは、経営計画の内容に関する自己評価の高さが、結果として業績向上に結びついていることです。企業成長に向けた成功のカギは、まず精度の高い経営計画を策定することに尽きます。精度の高い経営計画策定は、トップを始め優れた参謀の知略が求められます。

優れた経営者の成功には、優れた「参謀の影」ありともいわれています。経営参謀は社内に求めつつ、一方外部の経営参謀を要請することも選択肢として重要です。以下、経営計画の策定に関する外部支援の活用を見てみましょう。

4.経営計画策定の外部支援活用

経営計画策定の外部支援活用については、中小支援機関を通じて、中小企業診断士・税理士・会計士・経営コンサルト等が企業のサポートを行っています。

 

第3-2-12図は、外部支援の有無を表したものです。中規模企業は「56%」、小規模事業者は「62.5%」が外部支援を活用しています。小規模事業者の方が高いのは、社内において経営者を支えるナンバ-2や経営戦略を立てる経営参謀役不在のため、将来を見据え経営参謀の育成に積極的に取り組んでいくことが窺えます。

 

小規模事業者が、積極的に外部支援の活用をされることで、近い将来必ず「中規模企業」への活路を見出すことができるでしょう。

注記)出所:「2020年版小規模企業白書」

【コメント】
中小企業白書を通じて、企業成長に向けた「経営計画」の策定は、有効であるという確証を得ることができました。